不惑の40歳を迎えた妻たちが夫への殺意に目覚めるブラックコメディ
2022年にTV朝鮮で放送された韓国ドラマ「魔女は生きている」です。
主演にイ・ユリ、イ・ミニョン、ユン・ソイ。
夫役にはチョン・サンフン、キム・ヨンジェ、チョ・ソンユンが名を連ねています。
「私の名前はキム・サムスン」や「品位のある彼女」を手掛けたキム・ユンチョル監督が演出を担当しました。
生きてきた年数と残りの人生が半々となる40歳という節目に、それぞれ絶対に許せない相手を抱えた3人の女性が、過激な復讐へと突き進むブラックコメディです。
魔女は生きているの視聴率推移
| 回次 | 全国視聴率 |
|---|---|
| 1回 1部 | 3.417%(最高) |
| 1回 2部 | 3.282% |
| 2回 1部 | 1.872% |
| 2回 2部 | 2.682% |
| 3回 1部 | 1.516% |
| 3回 2部 | 2.480% |
| 4回 1部 | 2.003% |
| 4回 2部 | 1.894% |
| 5回 1部 | 1.627% |
| 5回 2部 | 1.658% |
| 6回 1部 | 1.611% |
| 6回 2部 | 1.593% |
| 7回 1部 | 1.916% |
| 7回 2部 | 1.557% |
| 8回 1部 | 1.647% |
| 8回 2部 | 1.471% |
| 9回 1部 | 1.305% |
| 9回 2部 | 1.199% |
| 10回 1部 | 1.066% |
| 10回 2部 | 0.789%(最低) |
| 11回 1部 | 1.302% |
| 11回 2部 | 1.291% |
| 12回 1部 | 1.0% |
| 12回 2部 | 1.071% |
※データ出典:Nielsen Korea基準
初回から3.41%を記録し、前作の終了から約2か月の空白期間があった枠としては上々な滑り出しを見せた「魔女は生きている」です。
しかし、結果としてこの1話の数字が自己最高視聴率となってしまいました。
2話以降は1%台での推移が続き、終盤の10話では0%台(0.78%)まで落ち込む苦戦を強いられました。
最終回12話も1.071%に留まり、数字の面では厳しい幕引きとなっています。
週1度の放送で、しかも23時台と遅い時間帯のドラマです。
視聴率が低いのは仕方がないのですが、明らかに落ちてしまったのは大きなマイナス要素ですね。
※数字はニールセンコリア調べ
魔女は生きているはつまらない?韓国でのリアルな評判と評価
今作はピカレスクとブラックコメディが融合したドラマです。
韓国で高く評価されたのは、主演を務めたイ・ユリを筆頭とする女優陣の振り切った怪演でした。
イ・ユリの「振り切り度」が想像の数段上をいく爽快感
イ・ユリといえば「福寿草」や「私はチャン・ボリ!」などで見せた、シリアスで鬼気迫る復讐劇のイメージが強い役者です。
しかし今作では、その卓越した感情表現のエネルギーをすべて「コメディの狂気」に注ぎ込んでいます。
怒りで目を血走らせながら包丁を握りしめているのに、動きは完全にコント。
不倫に泣き崩れる「悲劇のサレ妻」を期待すると、開始早々に肩透かしを食らいます。
怒りの沸点を突破し、もはや暴走機関車と化したイ・ユリの壊れっぷりは、シリアスを通り越して笑うしかありません。
クズ夫役・チョン・サンフンの「絶妙に憎めない喜劇の間合い」
今作が単なる胸糞の悪い泥沼愛憎劇にならずに済んでいる最大の功労者は、夫役のチョン・サンフンです。
彼の演じる夫は、浮気相手に夢中になり、妻に離婚を迫るという、文字に起こせば最低極まりないキャラクター。
ところが、持ち前のコミカルな間合いと情けない挙動のおかげで、視聴者の怒りが「苛立ち」ではなく「呆れ笑い」へと昇華されます。
妻にやり込められて情けなく怯える姿や、調子に乗って墓穴を掘る姿など、コメディ俳優としての反射神経が抜群で、イ・ユリとのテンポの良い舌戦は見応え十分です。
「ピカレスク(悪漢劇)」ゆえの共感できるキャラクターの不在
一方でピカレスク、ブラックコメディジャンル故のマイナス要素も。
王道の復讐劇であれば、「理不尽にいじめられた善良なヒロイン」を応援したくなる構図が作られます。
しかし、今作は登場人物のほとんどが自己中心的でどこか狂気を帯びているピカレスク構成です。
主人公のマリたちも被害者でありながら、怒りに任せて常軌を逸した行動に出るため、「そこまでやるか?」と引いてしまう場面が多く、従来の復讐劇のようにヒロインに肩入れしてスカッとするカタルシスは得られません。
「誰一人としてまともな大人がいない」というカオスな状況を楽しめる人には刺さりますが、主人公に感情移入して応援したいタイプの視聴者には、最後まで感情の着地点が見つからずストレスになりやすい設計です。
シリアスとコメディの温度差が激しく感情移入が追いつかない
ドラマのトーンに関しても、視聴者の間で好き嫌いがはっきりと分かれました。
今作最大の弱点は、扱うテーマの「重さ」とギャグの「軽さ」のバランスが崩れがちな点です。
不倫、介護疲れ、不妊、借金といった、本来なら胃が痛くなるような深刻な題材を扱っています。
それにもかかわらず、次の瞬間にはマンガのように極端なドタバタ劇やギャグシーンに急転換するため、観ていて感情の行き場に困る場面が多々あります。
深刻なシーンでしっかり心を痛めたい視聴者にとっては「不真面目に茶化された」ように感じられ、逆に純粋に笑いたい視聴者にとっては「設定が重苦しすぎる」という、どっちつかずな居心地の悪さを生んでしまいました。
甘くない女たちと比較して見える復讐の明暗とシスターフッドの着地点
境遇の異なる3人の女性が連帯して復讐に挑むドラマといえば、イ・ヨウォンやラ・ミランが主演を務めた「甘くない女たち」が代表格です。
どちらも「財閥の娘」「主婦」「市場の魚屋(あるいは元不良)」といったバラバラな背景を持つ女性たちが手を組む設定ですが、描かれるトーンの明暗は実に対照的です。
「甘くない女たち」が、心温まるシスターフッド(女性同士の連帯)を軸に、クスッと笑える可愛らしい仕返しで悪者を懲らしめるハートフルな復讐劇だったのに対し、「魔女は生きている」はブラックユーモアを交えつつも「夫の死」にまで踏み込んでいく過激でカオスな展開が持ち味。
後味の良い爽快感や女性たちの絆に癒やされたいなら「甘くない女たち」、毒々しい狂気と先が読めない泥沼のブラックコメディを楽しみたいなら今作といった形で、復讐の着地点が大きく異なります。
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アトリエの独り言
韓国でのリアルタイム放送時は、視聴率0%台まで落ち込む大苦戦を強いられたドラマです。
前作に「結婚作詞 離婚作曲3」がドロドロの愛憎劇で大ヒットしていた枠だけに、急激なコメディへの路線変更に多くの視聴者が脱落してしまいました。
日本での評価を見ても、残念ながら手放しでおすすめできる作品とは言えません。
Filmarksなどのレビューサイトを覗いてみても「期待外れだった」「結局何がしたかったのか分からない」といった厳しい低評価や中途半端な点数が目立ちます。
イ・ユリの怪演コント劇と割り切れるかどうかが分かれ道
特に日本の韓ドラファンがイ・ユリに求める「緻密でスカッとする本格復讐劇」を期待して観始めた人ほど、その落差にガッカリさせられています。
邦題に「妻たちの復讐」というサブタイトルが付いているものの、実際は綿密な罠を仕掛ける復讐劇ではなく、感情に任せてドタバタと暴れるスラップスティックコメディ。
個人的にも「福寿草」のような骨太のドロドロ愛憎劇が好きな人や、後味の良いシスターフッド作品を求めている人には、正直あまりおすすめできません。
ストーリーの整合性や共感性を求めず、「イ・ユリのはちゃめちゃな怪演コントを気楽に眺める」くらいの軽いスタンスで付き合える人にのみ、かろうじて選択肢に入る変化球ドラマです。

