美容外科×犯罪捜査の斬新な設定を活かしきれなかった
2024年11月から12月にかけて韓国KBSで放送されたドラマ「フェイスミー」です。
主演にイ・ミンギ、ハン・ジヒョン。
共演にはイ・イギョン、チョン・ペスが名を連ねています。
優れた解剖学的知識を持つ冷静な美容外科医が、ある事件を機に「犯罪被害者の再建手術」を引き受けることになり、熱血刑事と共に事件の真相を追っていくメディカルサスペンスです。
医療と刑事捜査の融合という意欲的な設定でスタートした本作。
題材が抜群に面白そうだっただけに、期待値MAXで見始めた視聴者も多かったはずです。
フェイスミーの視聴率推移
| 回次 | 全国視聴率 |
|---|---|
| 1回 | 3.3%(最高) |
| 2回 | 3.1% |
| 3回 | 2.3% |
| 4回 | 3.1% |
| 5回 | 2.2%(最低) |
| 6回 | 3.2% |
| 7回 | 2.5% |
| 8回 | 3.2% |
| 9回 | 2.8% |
| 10回 | 2.9% |
| 11回 | 2.6% |
| 12回 | 2.9% |
※データ出典:Nielsen Korea基準
初回は3.3%でスタートを切った「フェイスミー」です。
しかし、この1話の3.3%が自己最高視聴率となってしまいました。
中盤の5話では自己最低視聴率2.2%まで数字を落とし、その後も目立った浮上を見せることなく2%台を推移。
最終回12話も2.9%と、初回を超えることができないまま放送を終了しました。
なんとか2%台を死守したのがせめてもの救いですが、それでも1話最高というのは残念な傾向です。
途中で離脱した視聴者を呼び戻すだけのフックや、口コミによるバズを生み出せなかったことが視聴率推移にはっきりと現れていますね。
※数字はニールセンコリア調べ
フェイスミーはつまらない?韓国でのリアルな評判と評価
今作はメディカル、ヒューマン、サスペンス、犯罪捜査、バディものジャンルになります。
韓国の現地コミュニティで評価されたのは、美容外科の知識を犯罪捜査に応用するという序盤の着眼点の良さです。
美容整形を「捜査の手がかり」にした初期の知的カタルシス
法医学者が遺体を解剖して死因を特定するドラマ(「サイン」や「検法男女」など)は韓国でも定番ですが、今作の面白さは「生きている被害者の外傷」を形成外科医の視点で診る点にありました。
刃物の入り方や皮膚の裂け方、打撲痕の深さから、「犯人がどちらの手で凶器を持っていたか」「どの角度から襲ったか」を逆算していくプロセスは、序盤の大きな見どころです。
単なる医療ドラマでも刑事ドラマでもない、専門用語を交えた論理的なアプローチには、サスペンス好きを引きつける確かなフックがありました。
中盤以降の失速と予測できてしまう犯人像
しかし、全体を通してみると脚本の粗さやサスペンスとしての弱さを指摘する声が目立ちました。
最も惜しまれたのは、メインとなる事件の真相や真犯人の正体がかなり早い段階で読めてしまう点です。
怪しい人物の絞り込みやミスリードの仕掛け方がストレートすぎるため、中盤の早い段階で「真相の輪郭」や「誰が怪しいのか」がかなりの精度で予想できてしまいます。
韓国サスペンス特有の「何度も騙される快感」や「鳥肌が立つようなどんでん返し」を期待していると、予想通りのレールの上を物語がそのまま着地してしまい、クライマックスの衝撃やスリルが大きく削がれます。
序盤の最大の武器だった「美容外科×捜査」の個性が中盤から消えてしまう
さらに、もったいなかったのは、作品の看板であった「形成外科医ならではの解剖学的アプローチ」が、話が進むにつれて影を潜めてしまった点です。
序盤こそ「メスを握る医師にしか見えない微細な痕跡」から犯人像を逆算するワクワク感がありました。
しかし、物語の舵が「主人公の過去のトラウマ」や「復讐劇」へと切られた瞬間、その専門性は急激に失速。
気がつけば、主人公自ら現場を走り回るだけの量産型サスペンスに成り下がってしまいました。
医療ドラマとしてもサスペンスとしても「中途半端なトーン」
作品のジャンル的な立ち位置が最後まで定まりきらなかった点も、没入感を削いだ要因です。
本格的な医療ヒューマンドラマとして「被害者の心の回復」をじっくり描くのか、それともスリリングな「骨太クライムサスペンス」として突っ走るのか、そのバランスが曖昧でした。
医療ドラマ好きからすると「サスペンス要素が重すぎて医療描写が浅い」と感じられ、サスペンス好きからすると「再建手術のパートでテンポが止まってしまう」と感じられるため、双方のターゲット層にとって少し居心地の悪い中途半端さが残ってしまいました。
ファースト・レスポンダーズと比較して見える異色バディ捜査の魅力と違い
現場最前線の熱血刑事と、別分野の専門職がタッグを組んで事件の真相に迫るバディ捜査劇として、共通点が多いのが「ファースト・レスポンダーズ」です。
どちらも刑事単独では解決できない事件に対し、特殊な専門知識を持つプロフェッショナルが知恵を絞って挑む構図が大きな見どころになっています。
同じ「異色専門職との共助サスペンス」でありながら、両作が描くアプローチの方向性は対照的ですね。
「ファースト・レスポンダーズ」は、火災や大事故の現場で消防や法医学、科学捜査が連携し、過酷なアクションとスピード感で畳み掛けるスケールの大きな群像劇です。
まさに現場の熱気と動的なエネルギーで魅せるエンターテインメントに仕上がっています。
派手な現場アクションか、緻密な医学的プロファイリングか
一方で「フェイスミー」は、美容外科医の視点から被害者の外傷や痕跡を読み解く緻密なアプローチと、主人公が抱える個人的なトラウマの追及が軸になります。
派手な現場アクションではなく、被害者の体に残された微小なサインを観察し、そこから犯行状況を論理的に割り出していく静かで内省的なサスペンスが持ち味です。
大掛かりな現場救助とスピーディーなチームプレーを求めるなら「ファースト・レスポンダーズ」、医療の専門的な知見からじっくり真相を紐解く落ち着いた謎解きを味わいたいなら「フェイスミー」といった形で、好みに応じて楽しみ方が分かれる2作と言えますね。
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アトリエの独り言
美容整形を犯罪被害者の救済や捜査の手がかりに使うという初期設定が秀逸だっただけに、全体としての仕上がりにはもったいなさが強く残るドラマでした。
韓国での視聴率が初回をピークに低空飛行のまま終わってしまったのも、視聴者の期待値の高さに対して中盤以降のプロットが追いつかなかった結果と言えます。
正直おすすめはしにくい?視聴前に知っておくべき注意点
日本の視聴者の口コミをリサーチしても、手放しで万人におすすめできる作品とは言えません。
全12話と短いため時間は取られませんが、本格的なクライムサスペンスや、緻密に練られたどんでん返しを求めて見始めると、肩透かしを食らう可能性が高いです。
また、事件被害者のリアルな傷口や手術の描写が頻繁にインサートされるため、痛々しいシーンや医療描写が苦手な人にはそれだけでハードルが高くなります。
韓国ドラマの手術シーンは私も苦手なのですが、そこも好き嫌いの分かれるところでしょう。
「イ・ミンギやハン・ジヒョンのファンで、キャスト目当てでサラッと見たい」という人なら楽しめますが、骨太で先の読めない極上のサスペンスを期待しているなら、あえて優先して見るべき1本とは言い難いのが正直な評価ですね。



