財閥家の末息子でオ・セヒョンが食べていたドーナツの正体
大ヒットドラマ「財閥家の末息子」で、主人公のチン・ドジュンを支える最高の投資パートナーとして強い印象を残したのが、パク・ヒョックォン演じるオ・セヒョンです。
彼の初登場シーンやドジュンとの絆を深める重要な小道具として何度もドラマに登場したのが、美味しそうなドーナツでした。
一見すると単なるキャラクターの好物、あるいは韓国ドラマによくある間接広告(PPL)のようにも見えますよね。
実はこのドーナツには実在する韓国財閥の有名な逸話が隠されています。
ニューヨークの味と韓国ロッテ会長の有名な誘致ストーリー
セヒョンがニューヨークで好んで食べ、のちにドジュンが韓国に誘致したというエピソードを持つこのドーナツ。
このドーナツのモデルは、韓国でもお馴染みの「クリスピー・クリーム・ドーナツ」です。
実在するロッテグループのシン・ドンビン会長の有名なエピソードが、そのまま劇中に投影されています。
実在の財閥史を綺麗にトレースした脚本の隠し要素
シン・ドンビン会長はアメリカ留学時代にクリスピー・クリーム・ドーナツを非常に気に入り、よく食べていたと言われています。
その後、2004年にロッテショッピングを通じて実際にこのブランドを韓国国内へ初めて導入し、大ブームを巻き起こしました。
ドラマでのセヒョンとドジュンのドーナツを巡る一連の流れは、まさにこの会長の逸話を綺麗にトレースした隠し要素と言えます。
実在の出来事や財閥の歩みを巧みにシナリオに組み込む今作だからこその、ユーモアの効いた面白い演出ですね。
時代背景が理由でPPLが極端に少なかったドラマの裏事情
大ヒットする韓国ドラマといえば、作中に不自然なほど特定の化粧品や飲料、食品などの露骨な広告が挟まれることが日常茶飯事です。
しかし、「財閥家の末息子」はその圧倒的な視聴率(最高26.9%)と話題性に反して、間接広告(PPL)が極端に少ないドラマとして知られていました。
その最大の理由は、ドラマの大部分が1980年代から2000年代初頭という「過去の時代」を舞台にしていたためです。
現代の最新商品をレトロな劇中に登場させてしまうと、作品の最大の魅力である世界観や没入感が一気に崩れてしまいます。
制作陣が世界観を守るために、目先の広告収入よりも作品のクオリティを最優先した結果と言えますね。
今回のドーナツに関しても、もしスポンサー契約が成立していれば実名が出せたかもしれませんが、特定の企業が過去のシーンに合わせた広告を出すのは難しかったのかもしれません。
そのため、作中ではブランド名には直接言及せず、ロゴなどの商標を隠したり、パッケージの色味を少し変えるなどの対策をして映されていました。
最終回で一気に不満が爆発してしまった広告のバランス
過去のパートでは世界観を守るために徹底して抑えられていたPPLですが・・・。
それゆえに現代のシーンが中心となった最終回での見せ方には多くの視聴者から批判があったところです。
ドラマが現代に戻った途端、嘘のように特定の現代商品が画面に次々と映り込み、あからさまな広告演出が目立つようになってしまいました。(カプセルコーヒーや化粧品など)
個人的にあからさまなPPLは失笑しながら見ていますが、財閥家の末息子に関してはそれまでPPLがなかっただけに残念な部分。
最終回への批判が多いドラマではありますが、それは脚本的な部分だけでなく、PPLに関する演出も影響しているでしょう。
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アトリエの独り言
単なるおいしそうなドーナツというだけでなく、ロッテ会長の逸話を潜ませたあたり、面白い脚本でしたね。
事情があったにせよ、PPLとしてドーナツを出さなかったところがまた、結果的にクリスピー・クリーム・ドーナツの関心を高め、良い宣伝になったと思います。
だからこそ、最終回で急に現実の広告感が押し寄せてきた展開は、残念なポイントでもあります。
PPLが必要なのは理解できますが、自然に溶け込ませてほしいところですね。
今作は最終回までこれと言ったPPLがなかったので、余計に不自然さが目立ってしまいました。
豆腐ではなくドーナツを差し入れた韓国の文化背景
いずれにしても、ドーナツは小道具としてうまく使用されましたね。
オ・セヒョンが検察から解放されたとき、ドジュンが豆腐の代わりにドーナツを差し入れたシーンも面白い演出でした。
韓国では出所した人に「二度と罪を犯さないように(真っ白に生き直すように)」という意味を込めて豆腐を食べさせる文化があります。
豆腐ではなく「セヒョンの大好物であるドーナツ」を差し入れたドジュンの粋な演出。
こうしたディテールの積み重ねが、このドラマを名作たらしめている理由ですね。


